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[Tricentis Tosca]SAP開発のテスト工程の中で自動化ツールを使ってみた

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はじめに

プログラム改修後、一般的には修正範囲以外のシステムに影響が出ないことを確認するためにリグレッションテストを実施します。しかし、手動でテスト実施すると時間もかかり、作業者によって品質に差が発生します。
今回、株式会社KYOSO BS事業部ではSAPとパートナーシップを結んでいるテスト自動化ツール「Tricentis Tosca(トライセンティス トスカ)」を、実際の業務で利用する機会がありましたので、その流れと感想をお伝えします。

Tricentis Toscaとは

Tricentis(トライセンティス)社が公開している、アプリケーションの「E2Eテスト」を自動化し、高速化するために開発されたテストツールです。

E2Eテストとは

E2EとはEnd-to-Endの略で「端から端まで」という意味です。
ユーザーと同じようにブラウザーを操作し、操作した内容が期待通りに動作するか、システムやプロセス全体を通してテストすることです。

例えば、ログインページのシナリオでは以下のような流れになります。

  1. ログイン画面を表示
  2. User名を入力
  3. パスワードを入力
  4. ログインボタンを押下
  5. 管理画面に遷移していること

なぜ?「Tricentis Tosca」を選んだのか

一般的に、テスト自動化ツールとしては「Selenium」が有名です。
ただし、「Selenium」を使ってテストを作成するには、一定のプログラミングスキルが必要となります。
今回の案件では、将来的にテストを作成するユーザーが非技術者であるため、直感的に操作できるGUIを持ちプログラミングスキルが少なくても作成できるツールである必要がありました。
また、SAP社とTricentis社はパートナーシップを結んでいるため親和性が高いことを踏まえて、「Tricentis Tosca」を選択しました。

「Tricentis Tosca」のテスト作成までの一連の流れ

非技術者でも直感的にテストシナリオを作成できる

「Tricentis Tosca」はXScanという機能を使うことで、簡単にモジュールを作成できます。

図1.サンプルWebサイト

XScanを使用して、Webサイトからテスト対象を選択します。

.XScan

XScanで作成したモジュールを使用して、直感的にテストを設定します。

図3.Tricentis Tosca テスト設定

上記画像の場合、InnerTextに「TEMPLATE_LISTREPORT」と記載があるかを確認しています。

また、テストリストの中にはScreenshotを設定することが可能です。
これにより、エビデンス作成の1つの工程を簡略化することができます。

作成したテストを複数同時に実行することができます。

.Tricentis Tosca まとめてテスト

テストがまとまったフォルダを右クリックし、「Run」を押下します。
テストがすべて実行されるまで待ちます。

.Tricentis Tosca インジゲータ

インジケータが満タンになると、自動的にTricentis Toscaの管理画面に移動し、結果が表示されます。

.Tricentis Tosca テスト実行結果

テストが成功している場合はで、失敗した場合はで表示されます。

また、失敗したテストのみ再度実行することが出来ます。

Seleniumとの比較

Tricentis Tosca

非技術者でも使いやすく、メンテナンス性や多機能性に優れているため、迅速な導入と長期的な運用に適しています。

Selenium

プログラミングに精通しているチームにとっては柔軟性が高く、オープンソースでコストを抑えながら高機能なテスト自動化を実現できるツールです。

Tricentis Toscaを実際に使ってみて、Seleniumとの差を簡単に表でまとめました。

 SeleniumTricentis Tosca
環境構築複雑簡単
プログラミングスキル必要不要
メンテナンス複雑簡単
コスト無償有償
日本語対応対応非対応
メリットデメリット

Tricentis Toscaを使ってみた感想

作業時間の短縮

ツール導入前は、テスト実施に3人日を要していました。しかし、ツールを導入したことで、人が確認する箇所をツールが自動で実施してくれるため、エビデンスに実施結果をまとめる作業だけで済むようになりました。
その結果、工数を1人日に抑えることができました。
※人が必ずしもその場にいる必要がないため、深夜にテストを実施することも可能です。
さらに、JenkinsとGitLabを組み合わせることで、プログラムデプロイを契機にテストプロセスを実施することも可能となり、さらなる作業時間短縮の期待ができました。

環境構築

Tricentis Toscaの環境構築は非常に直感的で、公式サイトからインストーラーをダウンロードし、ガイドに従って数回のクリックでセットアップが完了します。
特別な前提条件や複雑な設定は不要で、すぐにテスト作成を開始できました。
TRICENTIS Tosca インストール手順
Tricentis Academyから参照

プログラミングスキル

Tricentis Toscaはプログラミングスキルがなくても、簡単にテストケースを作成できるため、ユーザーのスキルセットに関係なく、誰でもテストケースを作成することができます。
これにより、テストプロセスがより効率的になり、チーム全体の生産性に貢献しました。

メンテナンス

Tricentis Toscaの直感的なGUIは、非常に分かりやすく、初めてのユーザーでも迷うことなく操作できます。
ドラッグアンドドロップやXScan機能により、テストケースの作成と更新が簡単で効率的です。
ダッシュボードでテストの進捗を一元管理でき、モジュールベースのアプローチによりメンテナンスも非常に簡単です。

最後に

いかがでしたか?
本記事ではTricentis Toscaの機能と実際の使用方法について紹介させていただきました。
このツールはテスト実施プロセスを「人を通さず」実施することが出来ましたが、SAP Fiori UI5のバージョンアップを実施した場合、Tricentis Toscaが上手く動かないことがありました。
この問題は、「SelfHealing」という機能を使うことによりある程度のカバーが出来るようですが特定条件によってうまく機能しない場合があるようです。
Tricentis Toscaは非技術者でもテストを作成することが可能だと思いますがまだまだ、ツールを改良してもらわないと使いづらい部分があると感じました。

投稿者プロフィール

崎尾 健悟
崎尾 健悟
株式会社KYOSOに2021年中途入社
現在はSAP開発に従事しています。
前職ではWEB開発の経験を持ち、これまでに培った技術と知識を活かして、効率的かつ効果的なソリューションを提供しています。

<保有資格>
情報処理推進機構(IPA)認定資格 ITパスポート
SAPコンサルタント認定 SAP Certified Development Associate - SAP Extension Suite
SAPコンサルタント認定 SAP Certified Development Associate - SAP Fiori Application Developer
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